はじめに:メニュー図鑑シリーズへようこそ
サイゼリヤの全メニューを制覇するという、ちょっと無謀で、でもワクワクするこの「メニュー図鑑」シリーズ。
今回は、そのなかでも知る人ぞ知る名品、「スープ入り塩味ボンゴレ」をご紹介します。
パスタのラインナップの中では、少し地味な立ち位置かもしれません。
でも、実はこのメニュー、かつては期間限定商品で、当時サイゼリヤで働いていた私の記憶には、いまも強く残っています。
「ボンゴレまだ?」
そんな声を、何度聞いたことでしょう。
お客様にそう尋ねられるたびに、「ああ、みんなこのメニューを楽しみにしているんだな」と感じていました。
今回は、そんな“ボンゴレ待望論”の記憶とともに、定番メニューとして復活を遂げたスープ入り塩味ボンゴレの魅力を、
元サイゼ店員の視点から深掘りしてみたいと思います。

「期間限定→定番化」までのストーリー
今ではすっかり定番メニューとなっている「スープ入り塩味ボンゴレ」ですが、実はもともと期間限定メニューとして登場していたことをご存じでしょうか?
私がサイゼリヤで勤務していた当時、このボンゴレは季節メニューとして、ときどきひょっこり姿を現す“幻のメニュー”でした。登場するたびにファンの方からの反応がすさまじく、販売期間が終わると、決まってお客様からこう声をかけられました。
「ねえ、ボンゴレまだ? 次いつ出るの?」
厨房にいるこちらとしても、その言葉を聞くたびに「本当に愛されてるなあ」と実感。
常連さんの間では半ば“通”の選択肢として語られていて、出ていない時期でも記憶に残っている、そんな不思議なメニューだったんです。
ちなみに、あまり知られていませんが、一時期は“赤いボンゴレ”=トマトベースのボンゴレが登場していたこともあります。酸味の効いたトマトソースとあさりの旨味が合わさって、これも美味しかったんですが、やはり多くのお客様が求めていたのは塩味のボンゴレだったようです。
こうしたお客様の声を受けてか、ついに「スープ入り塩味ボンゴレ」は定番メニューとして登場。現在でも、その**“復活のストーリー”を知らずに食べている人がほとんど**かもしれません。でも、この一皿には、そんな静かなファンの熱量がギュッと詰まっているのです。

裏側トーク:厨房あるあると調理の進化
サイゼリヤでの13年間、厨房に立っていた私だからこそ語れる“裏側の話”があります。
スープ入り塩味ボンゴレ、実はこのメニュー、かつてはちょっと手間のかかる一品でした。
というのも、調理にはタイマーを使って加熱の時間を管理する必要があったんですが、スープの湯気がモクモクと上がるたびに、タイマーが湯気で壊れるんです(笑)。これ、現場では完全に“あるあるネタ”で、何回タイマーを交換したことか…。ボンゴレが出るたびに、スタッフがちょっと警戒する——そんなメニューでもありました。
ただ、こういった現場の“声”や“苦労”に、サイゼリヤ本部はちゃんと耳を傾けてくれる会社です。結果として、調理法が見直され、改良が加えられていきました。
タイマーの問題だけでなく、火加減のばらつき、仕上がりの安定性などが改善され、今ではスムーズに、そして安定した品質で提供できるようになっています。
つまり、「スープ入り塩味ボンゴレ」は、お客様からの支持と、現場の改善努力が重なって、“生き残り”、そして“洗練されていった”メニューなんです。
一見シンプルなパスタのようでいて、その裏にはちょっとした歴史と進化のドラマがある。
それを知ったうえで食べると、また違った味わい方ができるかもしれません。

味の魅力:オリーブオイルたっぷりの満足感
一口食べた瞬間、じゅわっと口の中に広がるオリーブオイルの豊かな香りとコク。
これこそ、「スープ入り塩味ボンゴレ」の最大の魅力ではないでしょうか。
サイゼリヤの他のパスタと比べても、このメニューは明らかにオイルの使用量が多めです。しかも、ただ油っぽいだけではなく、あさりの旨味が溶け込んだスープと絶妙に調和しているため、食べ進めるほどにその奥深さに気づかされます。
“塩味”と聞くと、味が淡白に思えるかもしれませんが、実際にはオリーブオイルのコク+あさりのダシが合わさって、むしろ濃厚な余韻が残るバランス設計。パンと一緒に食べてもよし、スープとして飲み干すのもよし。**“パスタでありながら、スープ料理としても成立している”**というのは、サイゼリヤのメニューの中でも珍しい存在です。
さらに、このボンゴレ、実はリピーターが多いんです。一度ハマると、次に来たときも「またあれが食べたい」となる、地味だけどクセになる系の実力派。店員として働いていたときも、決まってこのメニューを頼む常連さんが何人もいました。
派手さはないけれど、しっかりと美味しい。食べるほどに好きになる。
そんな“通好みの一皿”が、このスープ入り塩味ボンゴレなんです。
おわりに:また食べたくなる一皿を
地味なようでいて、実はとても奥深い一皿。
それが「スープ入り塩味ボンゴレ」です。
かつては期間限定でひっそり登場し、常連さんに“まだ?”と聞かれるほど愛されたメニュー。
いつしか定番となり、今では安定した品質で提供される“影の実力者”として、静かにメニュー表に居続けています。
サイゼリヤには、ドリアやミラノ風パスタ、ラムの串焼きなど、目を引く人気メニューがたくさんあります。でも、その影で、こういった“知る人ぞ知る名品”が存在していることも、サイゼリヤというお店の奥深さだと思うのです。
13年間サイゼリヤで働いてきたなかでも、このボンゴレには特別な思い入れがあります。厨房でのちょっとした苦労や、常連さんとのやり取り、そして何より、「これ美味しいんだよね」と笑顔で話すお客様の声が、今でも忘れられません。
次にサイゼリヤに行く機会があったら、
ぜひこの「スープ入り塩味ボンゴレ」、思い出してみてください。
一度食べれば、あなたもきっと“ボンゴレ派”になるかもしれませんよ。