① メニュー図鑑、次に思い出したのは「煉獄のたまご」
サイゼリヤのメニュー図鑑を書くようになってから、自分の中の“記憶の味”をたどる機会が増えた。
今も人気の定番メニューもあれば、もう会えない過去のメニューもある。
「次は何を書こうかな」と、ある日ふと思い出したのが——『煉獄のたまご』だった。
サイゼ好きなら、名前だけで「えっ、そんなのあったね!」「知らない、それ何?」と反応が分かれる、ちょっとマイナーで、だけど忘れられない一皿。
店員として働いていた頃に扱っていたからこそ印象深くて、しかも実際に食べて「めちゃくちゃ美味しかった」記憶がある。シンプルだけど、食べたときのインパクトが強かった。
そしてなにより、「パンにつけて食べると最高だった」。
今では公式メニューから姿を消したけれど、「煉獄のたまご」は、確かにあの時代のサイゼの中に存在していた。今回はそのメニューを、店員目線とファン目線の両方から、記録として残しておきたいと思う。

② 煉獄のたまごってどんなメニューだった?
「煉獄のたまご」という名前だけでも、インパクトがすごい。サイゼリヤにしては少し攻めたネーミングで、「えっ?煉獄って…辛いの?熱いの?なんか怖いんだけど…」と、初見でざわついた人も多かったと思う。
ちょうどあの頃は、アニメ『鬼滅の刃』が爆発的にヒットしていた時期。
「煉獄さんに便乗したの!?」なんて話題になって、SNSでもざわついていた記憶がある。もちろんメニュー名の由来はまったく関係ないんだろうけど、タイミングが妙に絶妙だったのだ。
実際に出てくるのは、トマトベースのソースに半熟卵が浮かんだ、ちょっと不思議な一皿。鉄皿に乗ってグツグツ音を立てながら提供される様子は、まさに“煉獄”という言葉にぴったりだった。
その見た目もさることながら、香りも食欲をそそった。トマトソースの酸味と旨味、そこにとろける卵のまろやかさが加わって、**見た目以上に“優しい味”**だったのをよく覚えている。
サイズ感はそこまで大きくなく、小皿前菜的な立ち位置。でも、なぜか満足感が高かった。ちょっと変わり種だけど、「これ好きだった!」という人は根強いと思う。

③ 実は、パルマ風スパゲッティのソースだった
「煉獄のたまご」は、見た目も味も個性的な印象があるけれど、実はその味のベースは『パルマ風スパゲッティ』のソースだった。
パスタメニューとしても地味に人気のある「パルマ風」だが、あのソースは単体でも非常に完成度が高い。
トマトの酸味と深みのあるコク、そこにちょっとした塩気が効いていて、卵との相性も抜群だった。
そう考えると、「煉獄のたまご」は“パルマ風スパゲッティのアレンジ版”とも言える存在。
ソースを鉄皿に敷いて温め、そこに卵を割り入れて、トロッと仕上げる。シンプルだけど、しっかり美味しい。
サイゼって「既存の素材を別メニューに応用する」のがすごく上手いなと思う。厨房で働いていたからこそ、素材や工程の共通性に気づくことも多かった。
その裏事情を知っていると、メニューの見方も変わってくるし、ちょっと嬉しくなる瞬間でもあった。
④ 元店員が語る「卵を割るのが意外と手間だった」裏話
実は私、当時サイゼリヤで働いていた元店員。
「煉獄のたまご」は提供する側としても、ちょっとだけ面倒なメニューだった。
なぜかというと——卵を一皿ずつ手で割って入れる必要があったから。
サイゼの厨房って、メニューの多くがすでに決まった工程で効率的に作れるように設計されている。だけど「煉獄のたまご」は、調理の途中で毎回生卵を割り入れる手間が発生する。
地味なんだけど、ピークタイムに何個もオーダーが入ると、ちょっと大変だったんです(笑)。
しかも卵って、割るのが上手くいかないと黄身が崩れたり殻が入ったりするから、地味に気を遣う作業。
鉄皿でソースを温めながら、絶妙なタイミングで卵を落とさないと見た目も悪くなってしまうし、温まりすぎて固くなってしまうこともある。
お客さんにとってはたった一皿のメニューでも、作る側にはちょっとした緊張感があった。
そういう意味でも「煉獄のたまご」は、サイゼの中ではちょっと特殊な、手作り感のあるメニューだったと思う。
⑤ パンをつけて食べるのが最高だった
「煉獄のたまご」で一番印象に残っているのは、やっぱり**“パンとの相性の良さ”。
卵のとろみと、トマトソースの旨味と酸味。そこにふわっと温かいパンをひたす**と、それだけでちょっとした贅沢感があった。
正直、最初はそのまま食べるだけだった。でもあるとき、「あれ?これパンと一緒に食べたらめちゃくちゃ美味しいのでは…?」と思いついて試してみた。
そしたらもう、「これが正解だったか…」という衝撃。
メニュー上は特に「パンと一緒に食べてください」なんて書いてなかったけど、“知ってる人はやってた”裏技的な楽しみ方だったと思う。
普段はフォッカチオやプチフォッカでディップ的に楽しんでいた人も多いはず。
煉獄のたまごは、トマトソースの酸味がベースにあるから、パンで拭うように食べると最後の一滴まで楽しめる。
「スプーンよりもパンが正解」。それくらい、あの組み合わせは相性抜群だった。
⑥ なぜ消えた?復活してほしい?考察と願望
「煉獄のたまご」、あんなに美味しかったのに、なぜかいつの間にかメニューから消えてしまった。
正式に「終売」のお知らせが出たわけではなかったけど、ある時期からひっそりと姿を消していた。
サイゼリヤでは時々こういう“静かに消えるメニュー”があるのだけど、煉獄のたまごもその一つだった。
消えた理由を勝手に考察するなら、たとえば「卵を1個ずつ割る手間がかかる」という調理工程の問題や、そこまで大量に売れるタイプのメニューではなかったというのもあるかもしれない。
食べた人の満足度は高くても、オペレーション効率や原価率的に難しかったのかもしれない。
でも個人的には、あの“シンプルでちょっと特別な一皿”が、今でも記憶に残ってる。
当時のサイゼらしい実験精神というか、“やってみた感”が詰まっていたメニューだと思う。
できることなら——いや、絶対にまた食べたい!
そしてできれば、フォッカチオとのセットで、「パンで食べるのが正式なスタイルです」って書いてほしい(笑)。
あの味を知らない世代にも、ぜひ体験してほしいなと思う。
⑦ まとめ|記憶に残る一皿として、また会いたい
サイゼリヤのメニューは、どれもコスパがよくて美味しくて、日常に寄り添ってくれる存在だった。
だからこそ、「あのメニュー、もう一度食べたいな…」と思うことがある。
煉獄のたまごは、そんな“記憶に残る一皿”のひとつ。
卵のトロッとしたやさしさ、パルマ風スパゲッティの奥行きあるトマトソース、そしてパンとの最強の組み合わせ。
そしてなにより、元店員だからこそ知っている、ちょっと手間のかかる裏話まで含めて、忘れられないメニューになった。
サイゼには、こうした「知ってる人だけが覚えている」隠れた名作がたくさんある。
今はもう出会えないかもしれないけど、メニュー図鑑として、記録に残しておきたい。
「懐かしい〜!」「そんなのあったんだ!」
この記事が、そんな反応を生むきっかけになったらうれしいです。