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サイゼリヤの一強に挑む「オリーブの丘」は、なぜ追えないのか。そして、追うのをやめたのか

サイゼリヤの2026年8月期(第54期)通期決算が、10月14日(水)に発表される予定です。焦点は、約6年ぶりとも言われる価格改定の行方です。

一方、その「一強」に挑む存在として名前が挙がるのが、ゼンショー系列の「イタリア食堂 オリーブの丘」です。

この記事では、オリーブの丘の成り立ち、サイゼリヤとの違い、そして「なぜ追えないのか、追わないのか」を、公開情報と決算資料で整理します。

目次

オリーブの丘とは?基本情報をまとめました

オリーブの丘は、ゼンショーホールディングスが展開する低価格帯のイタリアンレストランです。
パスタとピッツァを中心に、前菜・肉料理・デザートまでそろえています。

項目内容出典
運営会社株式会社オリーブの丘(2017年5月設立、ゼンショーグループ)ゼンショー沿革 2011-2020
ブランド誕生2011年1号店 保谷店の記録
1号店東京都西東京市(保谷)。旧「フラカッソ」保谷店を改装して開業同上
店舗数58店舗(2025年3月時点)→ 60店舗超(2026年3月時点)Wikipedia「オリーブの丘」(出典:CCC 2025/3/5、東洋経済オンライン 2026/3/26)
東京都内の店舗10店舗(うち6店舗は23区外)※2026年3月時点現代ビジネス(後編)
出店エリア関東中心。2024年7月18日に北海道初出店(札幌本町店)リアルエコノミー
客単価の目安1,000円前後のイタリアン市場に位置づけ東洋経済オンライン(同上)
グループの店舗数ゼンショー全体で14,947店(2026年3月末)ゼンショー 会社概要

出店の中心はロードサイド(郊外の幹線道路沿い)です。
クルマで来店するファミリー層を、広い商圏から集める形といえます。

主なメニューと価格の目安

2026年時点で報じられた価格(税込)は次のとおりです。

  • 平日限定ランチ(10〜17時):「海の幸とチェリートマトのペスカトーレ」979円(スープ・サラダ付き)
  • 平日限定ランチ:「デミたまハンバーグセット」759円(スープ・ライス付き、ライス大盛り無料)
  • パスタ(ボロネーゼ・アラビアータ):各539円
  • マルゲリータ:649円
  • ハウスワイン:グラス209円/デキャンタ759円

ピッツァは、注文後に生地を伸ばして焼くスタイルです。

実際に行ってみて:5年前と昨日で、印象がまるで違いました

私は、オリーブの丘に2回行ったことがあります。5年前と、昨日(10月12日)です。

5年前に行ったときは、正直なところ、「サイゼリヤの二番煎じだな」と感じました。
価格はサイゼリヤに寄せてあり、ロゴや、お皿の絵柄までそっくり。
しかし出てくる料理のクオリティや、提供時間は本家サイゼリヤには遠く及ばない印象でした。

ところが、昨日あらためて行ってみて、かなり感動しました。
同じチェーンとは思えないほど、印象が変わっていました。

5年前昨日(2026年10月12日)
第一印象サイゼリヤの二番煎じ「別の会社になった」
価格と中身のバランス価格だけが先行していた価格に見合う中身になっていた
総合及第点に届いていなかった感動した

この5年の間に、オリーブの丘に何があったのか。次の章から、その背景を整理していきます。

ゼンショーは「飲食業界のシティ・グループ」?

ここからは、あくまでたとえ話です。
ゼンショーの経営は、サッカーのシティ・フットボール・グループ(CFG)によく似ています。

CFGは、マンチェスター・シティを筆頭に、ジローナ、パレルモ、ニューヨーク・シティ、メルボルン・シティ、横浜F・マリノスなど、世界に10を超えるクラブを保有しています。
共通の経営モデルを、各クラブに載せていく仕組みです。

ゼンショーも、性格の異なる業態を並べています。

  • すき家、なか卯、はま寿司
  • ココス、ビッグボーイ、華屋与兵衛
  • ジョリーパスタ、そしてオリーブの丘

グループ全体の店舗数は、14,947店(2026年3月末)です(ゼンショー 会社概要)。
調達・製造・物流の共通インフラ(MMD)を各業態に載せ替えるのが、グループの強みです。

もうひとつ、CFGには特徴があります。
ライバルクラブから経営人材を迎えることでも知られている点です。
CEOのフェラン・ソリアーノ氏も、スポーツディレクターのチキ・ベギリスタイン氏も、元FCバルセロナの人物です。

外食業界でも、新業態を立ち上げるときに、競合の経験者(店長クラスなど)を好待遇で迎えるのは珍しい話ではありません。

さらに、グループ内にはジョリーパスタというパスタ専門店があります。
パスタのノウハウをグループ内で融通できるのは、CFGがクラブ間で選手やスタッフを動かせるのと似た、「社内の移籍市場」です。
オリーブの丘のパスタにも、そのノウハウが生かされているのではないか、というのが筆者の見立てです。

サッカー(CFG)外食(ゼンショー)
シティ・フットボール・グループゼンショーホールディングス
マンチェスター・シティ(旗艦)すき家(旗艦)
傘下の新興クラブオリーブの丘/ビッグボーイ/華屋与兵衛
世界に10を超えるクラブを保有14,947店の多ブランド経営(2026年3月末)
共通の経営モデルを各クラブへ共通インフラ(MMD)を各業態へ

つまり、オリーブの丘は「グループの力を使える新興クラブ」にあたります。

オリーブの丘のルーツは「フラカッソ」

オリーブの丘は、ゼロから生まれたブランドではありません。

  • かつて、イタリアン業態「フラカッソ」を運営していたサンデーサン社を、ゼンショーが2007年に友好的TOBで子会社化しました(リアルエコノミー)。
  • その後、グループ内で業態の整理が進み、フラカッソの店舗はココスやビッグボーイなどに転換されていきました。
  • 空いたポジションに立ち上げられた低価格イタリアンの新ブランドが、オリーブの丘です。
  • 1号店は、旧フラカッソ保谷店を改装した店舗でした。

買った店舗とグループ内のノウハウを組み合わせて、新業態を立ち上げた形です。
CFGが買収したクラブを自前のモデルで再建するのと、手つきが似ています。

立ち上げ期は、サイゼリヤを強く意識していた?

オリーブの丘は、「低価格イタリアン」という、サイゼリヤの主戦場に立ち上げられたブランドです。
そのため、立ち上げ当初は価格帯やメニュー構成で、サイゼリヤを強く意識していたと指摘する声があります。

ただ、人やメニューの外形を取り入れることはできても、サイゼリヤの「中身」までは持ってこられなかったのではないか。
5年前に私が感じた「二番煎じ」という印象は、まさにこの「外形だけを写した状態」だったのだと思います。

オリーブの丘は、DXとグループの力で「押し切る」クラブ

もうひとつ、筆者がオリーブの丘で感じるのは、テクノロジーへの積極的な投資です。
タッチパネルでの注文や、配膳ロボットなどで、現場の負担を減らし、回転率を上げにいっているように見えます。

  • サイゼリヤは、工程の設計そのもので、現場の負担を減らす
  • オリーブの丘は、テクノロジーへの投資で、現場の負担を減らす

同じ「効率化」でも、解き方がまったく違います。ここが、2社の個性の分かれ目です。

サイゼリヤは「育成と哲学のクラブ」

一方のサイゼリヤは、まったく違う作り方で強くなりました。
サッカーにたとえるなら、アスレティック・ビルバオです。

アスレティック・ビルバオは、バスク出身(またはバスクで育った)選手を中心に、自前の育成組織から選手を育てるクラブです。
ラ・リーガ創設以来、一度も降格していません。

サイゼリヤも、外から買い集めるのではなく、内側から積み上げてきた会社です。
ただ、メニューの中身は動き続けています。2026年2月18日と6月10日にグランドメニューを改定しました(2/18改定/6/10改定)。

6月の改定では「冷たいパンプキンスープ」(税込180円)が登場した一方、「若鶏のディアボラ風」と「柔らかチキンのチーズ焼き」は、在庫状況が不安定なことを理由に、差し込みメニューへ移りました。

つまり、価格は据え置きのまま、中身を調整しながら回しているのが、最近のサイゼリヤです。

なぜオリーブの丘は、サイゼリヤを「追えない」のか

ここからが本題です。
私は、オリーブの丘がサイゼリヤを「追えない」理由は、価格の作り方にあると考えています。
数字で並べると、はっきりします。

サイゼリヤオリーブの丘
国内店舗数1,063店(2026年5月末)60店舗超(2026年3月時点)
国内客単価862円(2026年8月期3Q累計)1,000円前後の市場
価格の代表例ミラノ風ドリア300円平日ランチ759円〜979円、パスタ539円

サイゼリヤの国内客単価は862円(2026年8月期第3四半期累計、前年同期844円)。
オリーブの丘は客単価1,000円前後の市場に位置づけられており、単価で1割以上の差があります。

この差は、値札の付け方ではなく、原価の作り方から来ています。

  • サイゼリヤは、製造・生産・流通・販売まで自社で一貫して運営している
  • 福島県に大規模な自社農場を持ち、食材づくりから関わっている
  • 工場で加工した食材を、店で仕上げて提供する仕組みをつくっている
  • 厨房は「火も包丁も使わない」ほど工程を突き詰めている、と語られることがあります

「火も包丁も使わない」は、料理を簡単にする工夫というより、誰がやっても同じ品質になるための設計です。
人に頼らない仕組みだからこそ、シフトが誰であっても、味と提供のスピードが安定します。これは、人を迎えたりメニューをまねたりするだけでは、簡単に再現できません。

2020年7月にミラノ風ドリアを299円から300円にした後、主要メニューの価格をほぼ据え置いてきたのは、気合ではなく、この構造に支えられています(サイゼリヤ公式メニュー)。

そして、ゼンショーグループにはジョリーパスタという中価格帯のイタリアンがすでにあります。
低価格帯はオリーブの丘、中価格帯はジョリーパスタ、という棲み分けです。
つまり、オリーブの丘がサイゼリヤと同じ価格まで降りる必然性が、グループ内にありません。
値段で殴り合うより、別の価値で差をつけるほうが合理的です。

だから、オリーブの丘はサイゼリヤの後追いをやめ、グループの総合力を正面から使う方向へ舵を切った。
これが、昨日の訪問で感じた「別の会社になった」という印象の正体だと考えています。

サイゼリヤとオリーブの丘を並べて比較

サイゼリヤオリーブの丘
立ち位置王者(育成と哲学)挑戦者(グループの新戦力)
店舗数国内1,063店舗(2026年5月末)60店舗超(2026年3月時点)
出店都心を含む全国ロードサイド中心
価格の目安ミラノ風ドリア300円、国内客単価862円平日ランチ759円〜979円、パスタ539円、客単価1,000円前後
強み自社農場・一貫した製造と流通・価格グループの資本力と調達力・メニューの幅
サッカーで言うとアスレティック・ビルバオCFG傘下の新興クラブ

「強い」の作り方が、根本から違います。
どちらが優れているかではなく、勝ち筋が別物だということが、並べてみるとよく分かります。
メディアでも、オリーブの丘はサイゼリヤよりやや高めながら、品質と価格のバランスがよい店として紹介されています。
サイゼリヤの上位互換!?とSNSでも話題になりました。

10月14日(水)、サイゼリヤの決算発表

サイゼリヤの2026年8月期(第54期)の通期決算は、10月14日(水)に発表予定です。

直近の数字は好調です。

  • 第3四半期累計(2025年9月〜2026年5月)の売上高は2,213億3,200万円(前年同期比+17.5%)
  • 同期間の営業利益は133億2,700万円(同+25.6%)、経常利益136億1,000万円(同+24.9%)
  • 国内事業の営業利益は55億9,200万円(前年同期比2倍超)で、アジア事業の73億400万円(同6.3%減)に迫っています
  • 国内の客数は1億7,375万8千人(前年同期比117.1%)、客単価は862円(同102.1%)——伸びの主役は客数です
  • 7月15日の決算会見で、松谷秀治社長が「9月以降の価格改定を視野に入れている」と発言したと報じられています

会社の通期予想は、売上高2,970億円、営業利益182億円(2026年4月8日に純利益を124億円から118億円へ下方修正)。3Qまでの営業利益が133億円なので、6〜8月の3か月で必要なのは残り約48億7,000万円、という計算になります。

実施されれば、全国規模では約6年ぶりの値上げになる可能性があるとも報じられています。なお、時期については報道ごとに表現が異なり、「2027年8月期に価格改定を検討している」と伝える記事もあります。正確な内容は、発表資料でご確認ください。値上げの基本的な考え方は、サイゼリヤの値上げはいつ?価格改定の最新情報でも整理しています。

また、決算短信は業績と来期の見通しを示す資料です。価格改定の具体的な中身は、会見や別のお知らせで示されることが多いと考えられます。水曜日は「値上げするか」だけでなく、「いつ・どこから動くのか」というヒントに注目したいところです。

もし値上げするなら?筆者の予想

ここからは、公開情報をもとにした筆者の予想です。当たるとは限りません。

予想①:まずは「価格」より「メニューの中身」が動く

サイゼリヤは、誰もが無理なく使える価格を守ることを大切にしています。
そのため、最初に動くのは価格ではなく、品揃えや構成だと考えます。2026年2月と6月の改定は、まさにその動きでした。

予想②:象徴メニューは「小さな刻み」で動かす可能性

象徴的なミラノ風ドリアも、2020年7月に1円だけ改定された前例があります。
つまり「絶対に触らない聖域」ではありません。大きく動かす場合でも、細かい刻みになる可能性があります。

予想③:在庫が不安定なものは、すでに動いている

2026年6月に差し込みメニューへ移った鶏肉系の2品は、状況の変化を受けやすいポジションにあります。
ほかにも、季節限定メニューは、比較対象が少ないぶん、価格を見直しやすいかもしれません。

予想④:本命は「次のグランドメニュー改定」

サイゼリヤは、2026年にすでに2月と6月に改定を行いました。次の改定の時期に合わせて方針が示される、という流れが自然だと考えます。

よくある質問(FAQ)

Q. オリーブの丘は、都心にもありますか?

オリーブの丘は、関東地方のロードサイドを中心に約60店舗を展開しています。
東京都内には10店舗あり、そのうち6店舗は23区外です(2026年3月時点)。都心よりも、郊外の幹線道路沿いが中心です。

Q. サイゼリヤの決算発表はいつですか?

2026年8月期(第54期)の通期決算は、2026年10月14日(水)に発表予定です。

Q. ミラノ風ドリアの値段はいくらですか?

2026年時点で、税込300円です。2020年7月に299円から300円へ改定されて以来、据え置かれています。

まとめ

  • オリーブの丘は、ゼンショーが展開するロードサイド中心の低価格イタリアン。2026年3月に60店舗を超えました。
  • サイゼリヤの国内客単価は862円、オリーブの丘は1,000円前後。そもそも土俵が違います。
  • サイゼリヤは、自社での一貫した運営と価格で強さをつくってきた、ビルバオ型の会社。
  • だからオリーブの丘は「追えない」し、グループ内にジョリーパスタがあるため「追う必要もない」。
  • 10月14日(水)の決算では、値上げの有無より「いつ・どこから動くか」に注目。

参考:東洋経済オンライン(オリーブの丘 2026/3/26)/PRESIDENT Online(オリーブの丘 2026/7/2)/リアルエコノミー(北海道初出店)/オリーブの丘 1号店 保谷店/サイゼリヤ 2026年8月期 第3四半期決算短信(2026/7/15)/サイゼリヤ 2026年8月期 第3四半期決算説明資料/サイゼリヤ 6/10 グランドメニュー改定/ゼンショーホールディングス 会社概要

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