最終更新:2026年11月2日
「全国どこにでもあるファミレス」──そう思われがちなサイゼリヤですが、実は2026年11月の今でも「サイゼリヤが存在しない県(空白県)」があります。
かつては「空白地帯」と呼ばれた北海道や青森、秋田にも続々とオープンし、東北エリアはすでに全県制覇。四国でも、2022年の香川出店を皮切りに、2024年にはついに徳島・愛媛・大分の3県へ初進出を果たしました。
それでも、まだミラノ風ドリアが届いていないエリアが、日本に「5県」残されています。
「なんでうちの県には来ないの?」「嫌われてるの?」
そんな声も聞こえてきそうですが、そこには嫌がらせでもなんでもなく、「あの安さを守るための鉄の掟」が存在しました。
今回は元店長の視点から、最新の未出店エリア事情と、出店しない「合理的な理由」、そしてついに空白県に出店した際に起きる「ある事件」についてお話しします。
※この記事は執筆後、店舗情報が変わり次第更新しています。直近の確認は2026年11月2日です。
1.【2026年11月最新】サイゼリヤがない県はこの「5県」
まずは現状の整理から。
サイゼリヤの国内店舗数は1,060店舗(2026年第1四半期時点)。出店済みの都道府県は42で、本州(東北・関東・中部・近畿・中国)はすべて埋まっています。
サイゼリヤ自身が決算説明資料で「未出店地域数:5」と公表している通り、残る空白県は次の5県だけです。
| 県名 | エリアの現状(2026年11月時点) |
|---|---|
| 高知県 | 四国で唯一の空白県。最寄りは愛媛県の3店舗(今治・松山・松前) |
| 長崎県 | 福岡・佐賀・熊本には店舗があり、隣接エリアからの物流は確保されている |
| 宮崎県 | 最寄りは熊本・大分エリア |
| 鹿児島県 | 最寄りは熊本・大分エリア |
| 沖縄県 | 公式の店舗物件募集からも「沖縄県を除く」と明記(理由は後述) |
2年前の2024年には8県あった空白県が、一気に5県まで減りました。しかも、まだサイゼリヤがない県のほとんどが、すでに「県内1〜3号店」まで体制を固めた県の隣に位置しています。
つまり、この記事を読んでいるそちらの県でも、状況は刻々と変わっているかもしれない、ということです。
2. 出店ラッシュ年表──「空白県」が埋まるスピード
「空白県が減っている」といってもピンとこないかもしれませんので、ここ数年の動きを年表にまとめました。
| 年月 | 動き |
|---|---|
| 2022年 | 香川県に初出店。四国進出の第一歩 |
| 2024年10月 | 徳島県に初出店(イオンモール徳島店) |
| 2024年11月 | 愛媛県に初出店(そよら今治馬越) |
| 2024年12月 | 大分県に初出店(トキハわさだタウン店)。開店初日は50分待ちの行列 |
| 2025年6月 | 愛媛県2号店(イオンスタイル松山店) |
| 2025年9月 | 大分県2号店(イオン高城店) |
| 2025年12月 | 徳島県2号店(徳島駅クレメントプラザ店) |
| 2026年1月 | 愛媛県3号店(エミフルMASAKI店)。開店後も行列が続く |
| 2026年5月 | 大分県3号店(大分オーパ店) |
注目してほしいのは、1号店が出てから2号店・3号店までのスピードです。
徳島は1号店から2号店まで1年2か月、愛媛は1年2か月で3号店まで到達しました。これには理由があって、サイゼリヤは「ポツンと一軒」だけ出店することを嫌う、いわゆるドミナント戦略を採っているから。1号店が好調なら、その物流と準備を基盤にして、2号店、3号店と一気に固めていきます。
つまり「県内1号店」はゴールではなく、その県が本格的にサイゼリヤ経済圏に入った合図なんです。
3. なぜ出店しない?元店長が教える「物流の壁」
「人気なんだから、作れば絶対儲かるじゃん!」
そう思うかもしれません。実際、大分や愛媛の1号店では開店初日から長時間の行列ができたわけですから、儲からないはずがない、と。
しかし、サイゼリヤには「儲かるか」以前に「運べるか」という大問題があります。ここが、今回お話ししたい一番のポイントです。
理由①:自社工場からの「コールドチェーン」が届かない
サイゼリヤの食材は、自社工場(国内・オーストラリア)で加工され、鮮度を保ったまま店舗へ運ばれます。
この時、産地から店舗まで一定の低温を保ち続ける「コールドチェーン(低温物流網)」が必須です。
配送コストが上がってしまうと、「ミラノ風ドリア320円」が維持できなくなってしまうのです。
(※サイゼリヤは2026年10月29日にメニュー全般で平均6%の価格改定を行い、ミラノ風ドリアは長年守っていた300円から320円になりました。それでも、なお突出した安さであることに変わりはありません。詳しくはサイゼリヤの値上げまとめ記事をご覧ください)
320円で提供するためには、「近場の工場から効率よく運ぶ」ことが絶対条件になります。海を越え、山を越えて運ぶと、その分は価格に転嫁するしかない。サイゼリヤはそれを嫌がるのです。
理由②:ドミナント戦略(一気に出店しないといけない)
先ほどの年表でも触れましたが、サイゼリヤは「ポツンと一軒」だけ出店することを嫌います。
出すなら、そのエリアに工場や配送ルートを確保し、一気に10店舗、20店舗と固めて出店(ドミナント出店)しないと効率が悪いのです。
「出すなら一気に攻める。準備ができるまでは一歩も動かない」
これがサイゼ流の経営判断であり、空白県がなかなか埋まらない理由なのです。
理由③:公式に「沖縄県は対象外」と明記されるほどの距離
ここまで読むと、「じゃあ九州南部や四国も、いずれはじわじわ広がっていくのでは?」と思いますよね。
ただ、沖縄だけは事情が違います。
サイゼリヤの公式サイトにある「店舗物件募集」ページでは、募集地域が「全国(沖縄県を除く)」と明記されています。
海を越えてコールドチェーンを維持するコスト、本州からの部材輸送、離島という立地。すべてを考えると、現時点ではサイゼリヤの「鉄の掟」と合わない、というのが公式のスタンスなのです。九州南部や四国には「いつか来るかも」という余地がありますが、公式に対象外と書かれているのは、沖縄だけなんですね。
4. ついに空白県に進出!その時、現場で起きること
そんな厳しい条件をクリアし、ついに「空白県」への出店が決まった時。現場では、想像を絶する事態が起きます。
それは、「半端ではない長さの行列」です。
長年待ちわびた県民の皆さんの期待値は最高潮。「テレビやネットで見ていたあのミラノ風ドリアが、ついに食べられる!」という熱気で、お店の前には朝から凄まじい人だかりができます。
実際、2024年12月の大分1号店では、開店初日から「50分待ち」というファミレスとは思えない行列ができて話題になりました。「数年待った」という声すら飛び出したんです。
実は私も過去に、ある新規エリアの出店に携わったことがあるのですが、その時の光景は忘れられません。あまりにお客様が並びすぎてしまい、急遽、予定していた開店時間を30分早めてオープンしたこともありました。
新規店舗のオープンというのは、在庫や仕込みの量が読めない「未知との遭遇」です。それでも、先に並んで待ってくれるお客様の顔を見たら、「早く入れてあげたい」という気持ちが勝ってしまう。開店時間の前倒しって、実はかなりの勇気と判断力がいることなんですよ。
それは単なる「飲食店のオープン」ではなく、まるで「地域のお祭り」のような熱狂ぶり。「待たせてごめんね、やっと来たよ」という申し訳なさと、「こんなに待っててくれたんだ」という感動で、スタッフ側も胸が熱くなる瞬間です。
5. 次にサイゼリヤが来るのはどの県?【元店長の予想】
ここからは、あくまで「元店長の推測」として聞いてください。
まず最有力は、高知県です。
四国は香川・徳島・愛媛と出店が進み、残りは高知だけ。愛媛県内にはすでに3店舗があり、四国を縦断する物流網はこの数年でかなり育ってきました。「四国制覇まであと1県」という状況は、サイゼリヤ側にとってもきっと無視できないはずです。
次に現実的なのは、九州南部(宮崎・鹿児島)。大分に3号店まで出て、熊本・大分を軸にした南九州方面の配送ルートが整えば、ドミナント出店の条件は揃っていきます。
一方、沖縄は、先述の通り物件募集でも対象外とされており、当面は難しいと見るのが妥当です。
ちなみに、「次にサイゼリヤができると思う県」を投票で募集しているメディアもあり、空白県民の熱い思いが垣間見えます。どこが1位になるか、投票結果をチェックしてみるのも面白いですよ。
6. よくある質問(FAQ)
Q. 沖縄にサイゼリヤがないのはなぜ?
A. 物流コストの問題が最も大きいと考えられます。サイゼリヤは自社工場から低温のまま食材を運ぶコールドチェーンを必須としており、海を越える輸送は採算が合わないためです。公式の店舗物件募集でも「沖縄県を除く」と明記されています。
Q. 空白県から一番近いサイゼリヤはどこ?
A. 高知県からは愛媛県内の3店舗(今治・松山・松前)、長崎県からは佐賀・福岡・熊本方面、宮崎・鹿児島県からは熊本・大分方面の店舗が最寄りになります。
Q. ミラノ風ドリアは今いくら?
A. 2026年10月29日の価格改定により、320円(税込)からとなっています。長年300円を死守してきましたが、メニュー全般の平均6%改定に含まれる形でした。それでも価格帯としては突出して安い水準を維持しています。
Q. 四国でサイゼリヤがない県は?
A. 高知県のみです。香川・徳島・愛媛は出店済みです。
7. まとめ:あなたの街に来る日は、確実に近づいています
サイゼリヤが出店しない理由は、「嫌いだから」ではなく「どこでも同じ品質を、驚異的な安さで提供する準備」をしているからでした。
2024年以降、徳島・愛媛・大分と続いた出店ラッシュを見れば分かる通り、準備が整った県から、確実に、しかし着実に空白県は埋まっています。残り5県。この数字は、きっと来年には変わっているはずです。
「安易に一店舗だけ出して地元の期待を裏切る」のではなく、全国どこでも同じメニューを同じ価格で食べられる体制が整うのをじっと待つ。この「待てる経営」こそが、サイゼリヤの誠実さです。
まだサイゼリヤがない県の皆さん。焦らされた分だけ、ついにオープンした時の喜び(と行列)はものすごいものになります。その時、ミラノ風ドリアはきっと、長い旅路と企業努力を経て届いた「奇跡の味」になっているはずです。
